「死ぬ瞬間まで、好きなものだけを撮り続ける」 フォトグラファー・ゆうばひかりさんインタビュー【後編】

2022/08/25 Thu
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ライブフォトグラファー・都市風景写真家として活動中の、ゆうばひかりさん。
インタビュー後編では、個展を通して感じたこと、そしてゆうばさんの写真に対する想いをお聞きしました。

Writer/Interviewer
山田夏輝/キウチトウゴ
Photographer/Editor
絵美里
ゆうばひかり(ユウバヒカリ)

1994.5.28.生まれ。大阪府出身 東京都世田谷区在住。
ライブフォトグラファー・都市風景写真家としてフリーランスで活動中。

聖蹟桜ヶ丘での個展を終えて、何か感じたことはありましたでしょうか。

ゆうば

今回初めて見てくれたお客さんと話す中で、「どこで撮ったのか」とか「色が綺麗ですね」とか、事実として客観的な視点で見てくれている印象を受けました。カメラマンとして、写真単体での戦い方をもっと意識できるんだなと。
逆に、前から私を知っている人は私の人格とか「私という人間ありき」で写真を見ていてくれてたことにも気づきました。

1ヶ月という長期間の展示で、在廊しない日も多かったので、見てくれた方がどう感じたのかが分からず、そわそわしていました。でも最終的にたくさんの方とお話できたし、SNSで感想を伝えてくれる人もいて、「みんな気にかけてくれてるんだな」って。
私の個展を見るために「はじめて聖蹟に来ました」っていう人もたくさんいました!
「その土地の写真を、その土地で展示して、その土地の人に見てもらう」という個展ができたら素敵ですよね。

多摩で印象に残っていることはありますか?

ゆうば

大栗川の向こうに虹を見たことと、17時にチャイムのメロディーが流れること。

ただ、まだ聖蹟桜ヶ丘駅でしか降りたことがないので、これから開拓したいです。展示会場のくさびや前に置いてある椅子は、大栗川の風景や夕陽を眺められるのでお気に入り。

今後は、今回の展示で壁をお借りした聖蹟桜ヶ丘のくさびやで、別の展示を見に行きたいです。同じ壁がどんな風に使われるのか見てみたい。

ゆうばさんが見た、大栗川のむこうに架かる虹(ゆうばさん撮影)

「BLANK」での写真もそうだったのですが、ゆうばさんの写真は、昔の風景のように感じることがあって、今なのか昔なのか不思議な感覚になるんですよね。意識されて撮影しているんですか?

ゆうば

自分の中でも「いつ撮って、いつ公開されたのか分からない写真を撮りたい」という気持ちはあります。でも撮ってる最中にそういうことを考えてはいなくて。古いもの、ずっと続いているものとかその形で残っているものとかは好きなので、必然的にそういうところばかりを撮っているんだと思います。

影響を受けた人物がいたりするんですか?

ゆうば

エリオット・アーウィットと森山大道です。
ライフワークみたいに、楽しんで撮っているような空気感がすごく素敵で、2人の写真から、「伝えたいことって実はないんじゃないか」と感じたんです。風景や人物のありのままを撮って、みんなに見せてくれて。見る人がそれぞれ素敵なところを探せるので、押し付けがましくないところが好き。

私も個展をやったり写真を販売したりするようになって「みんなはどういう写真が好きなんやろう」とか「どういう写真を撮ったら売れるんやろう」とか考えるときもあったんですけど、結局考えてできるものではなくて。

自分と写真の在り方を考えていた時期にふたりの写真を見て、「あ、これでいいんや」っていう風に思えたんですよね。そういう意味でいうと、影響を受けたというよりは「安心させてくれた人」かもしれないです。「写真って、このスタンスで良いんやな」って。

ゆうばさんが撮影した、春の大栗川

ゆうばさんが写真を撮ることで伝えたいことは、どんなことですか?

ゆうば

実はないんですよ!

文章や映像に比べて、写真は説明できる量が少ないですよね。その分「余白」が多くて、見る人がより自由に想像できるところがすごく好きだから、いろいろ想像してほしい。私が「撮った理由」はあるけれど、その写真を見て何を思って欲しいとか、何かを伝えたいとかではなくて。
先に「この写真をみて、こう思ってください」って言ったらその目線でしか見られなくなるし、それはすごくもったいないと思う。写真の良さを潰すようなことはしたくないから、自由に見てほしいんです。

ライブを撮りはじめた理由も同じなんですが、「素敵!」って思ったところを「見て見て!」ってしていきたいだけなんです。いいと思ったものをみんなに見せびらかしたい感じです。

私が撮った街の写真を見た人が「その街に行ってみたい」「この街にはこんな瞬間もあるんだ」「雨が苦手だけど、雨の風景は悪くないかもな」などと思ってくれることがあればすごく嬉しいとは思っています。

最後の質問なのですが、「こういうカメラマンでありたい」という理想などはありますか?

ゆうば

自分が素敵だと思うものを大事にできるカメラマンでいたいですね。素敵と思ったものを愚直に撮り続けていたいなと。
表現者になりたいわけでも、何かを伝えたいわけでもなくて。「コレクター」に近いかもしれません。自分が街で出会った素敵なもの、素敵な風景を集めて残しておきたい。そしてそのコレクションをたくさんの人に見てもらいたいという気持ちです。なので、自分の趣味を相手が解ってくれなくてもそれでいいですし、もし相手も好きだと感じてくれたなら「だよね!」ってテンションが上がりますし。

今後は、また展示などを積極的に行っていくのでしょうか。

ゆうば

年に2回ペースでの展示と、装丁写真を撮ることが一番近い目標です。

毎日写真を撮っているので、長い期間展示をやらないと写真がたまりすぎますし、できるだけあたたかい状態で、撮ったときの自分の心境ともリンクした展示が理想です。
写真の展示も、バンドのライブのように定期的に開催していれば、お客さんは自分の行けるタイミングで無理なく行くことができますよね。「ドア開けとくからいつでも来てね」っていう状態でいたい。

装丁写真は今までやったことがないんですよね。『I LIKE YOU 忌野清志郎』では本文の写真だったので、表紙っていうのはまだなくて。
写真をやっている内に、画面越しよりも、本やCDのような「ものになる」ということに重きを置くようになりました。もともと本が好きなのですが、好きな本の表紙が素敵だと嬉しい気持ちになるので、自分でそれをやってみたいんです。

でも、ずっと先の未来まで思っている夢は「死ぬ瞬間まで、好きなものだけを撮り続けること」ですね。

「死ぬ瞬間まで、好きなものだけを撮り続ける」
インタビューの最後に強いメッセージを残してくれたゆうばさん。

今を写した写真なのに、どこかノスタルジックな哀愁を感じるゆうばさんの写真は、筆者も大ファン。これからもどんな写真を魅せてくれるのか。今後もゆうばさんの作品が楽しみで仕方ありません。

ゆうばひかりさんの最新情報は、各種SNS・ウェブサイトよりご確認ください。


ウェブサイト https://hikariyuba.wixsite.com/photo

Instagram https://www.instagram.com/__yubahikari/

Twitter https://twitter.com/monster_ep_

ゆうばひかりさんインタビュー 前編はこちら
Writer/Interviewer:山田夏輝

Writer/Interviewer:キウチトウゴ

日野生まれ、多摩市在住。くさび社所属。緑色のものを追いかけるのが好きです。夢は多摩市に銭湯を作ること。

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Photographer:絵美里

生まれも育ちも京王線沿い。くさび社所属のシングルマザー。愛猫のプティは最近新しい家族に。元美容師で、現在はライティング、フォトグラファー、デザイナー、古着屋の運営などなんでもやっています。

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