- Writer
- キウチトウゴ
聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩5分。川崎街道沿いにひっそり佇む、聖蹟の愛され町中華こと「大門」。
今日も、学生、ドカタの兄ちゃん、昼からビールを飲むおっちゃん、家族連れ…店内は日夜賑わい、聖蹟に住む老若男女の胃袋を満たし続けている。
Vo.1,2は麺・麺と来たので、今回は丼ものを、ということで、大門全メニュー制覇への道 vol.03 は「中華丼」をご紹介。
日々ストレスの溜まる現代社会を生きていると、どうしても食事でストレス発散=アブラッこいものをガッツリいきがち。むしろ、そういう時のために町中華は存在しているといっても過言ではないのだが、とはいっても「野菜は摂りたい」という、一握りの良心は残っているというのが、振り切れない人間の性。でも、ヘルシーサラダが食いたいわけではない。食欲って、なんて我が儘なんだろう。
そんな己の欲望と闘わなければいけない時にオススメなのが、中華丼だ!
見てください、たっぷりのザク切り白菜と、インパクトのあるキクラゲ。そしてアツアツに立ち込める湯気!
そして、具を満遍なく包み込む餡。
白飯に絡むとそれはもはや魔法のような味わい。トリップしないよう注意が必要だ。
餡でコーティングされた具は「冷める」という言葉を知らない。最後の最後まで、中華鍋から生まれ出た時の熱を保持し、ヤケドに注意しながらハフハフと頂く。
中華丼に関して、高校生の頃の思い出深いエピソードがある。
育ち盛りのその頃といえば、家から持ってきたお弁当は2限か3限の小休憩で早々に平らげ、お昼は学食で食べ直すという流れが定番だった。
そして、中華丼は学食メニューの定番でありよく食べていたのだが、中華丼を食べる時に、自分だけの密かな楽しみがあった。それは「忍法、うずら残し」を極めることだ。(ネーミングは今付けた)
自分は特別な存在であることを誇示するかのように、白菜の群れの中で燦然と輝く白い球体。その宝物をいかに長く口の中に残しておけるか。それが「忍法、うずら残し」の極意である。
小さく繊細なうずらの卵は、少しでも傷つけば黄身が露出して形状を保てない。歯で傷つけたり、ちょっとした衝撃で潰してしまわないよう、ほっぺたの空洞を上手く利用して保護。記憶は定かではないが、6限が終わるまで口の中にキープしていたこともあったかと思う。12時に食べて、15時くらいまで。およそ3時間口の中であたため続けたうずらの卵を、授業終了後に噛みしめる。もはや味は失われているが、その時のニュッという感覚は今でも口が覚えているほど、特別な体験だった。
その頃のクセで、今でもうずらの卵は最後に残してしまう。
久々に、「忍法、うずら残し」にチャレンジして帰宅してやろうか…と魔が差しそうにはなったが、今はもう立派なオトナに成長したので、そんなことはしない。グッとこらえてその場でひと噛み。しっかりと餡の味が残ったうずらの卵を噛みしめ、中華丼を締めくくる。
そんな記憶を呼び覚ましてくれるのが、大門の中華丼なのだ。
- Writer:キウチトウゴ
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日野生まれ、多摩市在住。くさび社所属。緑色のものを追いかけるのが好きです。夢は多摩市に銭湯を作ること。
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